WORLD TRIGGER vol.8

Junction Point

前回の考察までで主な隊員の加入時期などはひととおり見てきましたので、残るは玉狛支部のA級隊員。
しかし、レイジ、小南、烏丸はいずれも玉狛独自開発のトリガーを使う、ボーダーでも異質な隊員たちです。
彼らについて考察する前に、まずはボーダーの通常のトリガーから押さえておくことにしましょう。

孤月とスコーピオン

アタッカーの標準兵装とも呼ぶべきふたつのトリガーですが、開発は孤月の方が先になります。

「何年か前までは 攻撃手用のトリガーって『孤月』一種類しかなかったんだよね そんで太刀川さんと迅さんは 当時の個人戦ランク1位と2位だったんだけど 迅さんが「孤月じゃ太刀川さんには絶対勝ち越せない」って言って 技術者と一緒に新しく作ったのが『スコーピオン』なの」

第27話:宇佐美のセリフより

迅と太刀川がランク戦で争っていたのは、風刃を手にしてS級になったT.C.2012.11月前後までとなりますので、スコーピオン開発は少なくともそれより前、スコーピオンの迅と孤月の太刀川が互角の勝負だったということを考慮すると、開発から迅がS級になるまでにはそれなりの対戦期間があったことが伺えます。

「迅さんが『スコーピオン』を使い始めてからは互角の勝負だったけど」

同上

また、宇佐美がこれを伝聞としてではなく、自身で見聞きしたこととして話していますので、これらは宇佐美の入隊後のできごとではないでしょうか。

とはいえ、宇佐美はT.C.2012入隊組では遅めの入隊です。
そこも含めて時系列を収めるとすると、宇佐美の入隊と前後する時期にスコーピオンが開発され、その年の末頃に風刃の争奪戦が行われたという形かもしれません。

ちなみに、ここで言われているエンジニアというのは玉狛のチーフエンジニア、ミカエル・クローニンのことです。

ラボでの専門は「トリオンの形状と軌道の制御」で、追尾弾・変化弾・スコーピオンなどの開発・改良を担当(スコーピオンは迅との合作)。

JC20巻:カバー裏のクローニンの解説より

レイガスト

攻撃手用のトリガーでありながら、防御面を重視したレイガスト。
こちらはチーフエンジニアのひとり、寺島雷蔵による開発であることが判明しています。

ラボでの専門は「トリオン反応によって生じる衝撃波の観測と制御」で、レイガスト・スラスター以外にメテオラの開発・改良も担当している。トリオン兵の開発にも興味があり、(以下略)

JC17巻:カバー裏の雷蔵の解説より

レイガストについては、BBFの方でも詳細が明かされています。

Q「レイガストの開発時期および開発エピソードを教えてください。」
A「当時トップクラスの孤月使いだった寺島雷蔵(18)が、弾丸トリガーの強化と流行にムカついてエンジニアに転向、対・弾丸トリガー用のブレードとして、シールドとスコーピオンをベースにして開発したのがレイガストです。

BBF質問箱DX:Q155より

雷蔵の誕生日はT.C.1994.11.5ですから、18才の期間となるとT.C.2012.11.5~T.C.2013.11.4の1年間。
ちょうど上記のスコーピオンの開発時期とも合致します。
スコーピオンの可変機能の技術がレイガストにフィードバックされているとすると、スコーピオンが出回ってある程度経ってからの開発だったのかもしれません。T.C.2013ごろか?

宇佐美によるとレイガストはあまり人気がない、とのことですが、実際にBBFでA級1位~B級21位部隊の各隊員のトリガー構成を見てみても、レイガストをセットしているのはA級8位片桐隊の一条雪丸(メイン・サブ)とB級8位鈴鳴第一の村上(サブのみ)、デビューしたばかりの玉狛第2の修(メインのみ)の3人しかいません。他ではレイジがセットしているくらい。

「6位っていまだれ?」
「雪丸か生駒さんあたりですね」

第160話:小南と烏丸の会話より

他にもチームに所属していない正隊員がセットしている可能性があるにせよ、正隊員の大半を占めるであろうA級・B級チームの全隊員のうち使用者が4人とはあまりに少ない。
…にもかかわらず、パーフェクトオールラウンダーのレイジが近接戦闘用トリガーとして孤月やスコーピオンではなくレイガストをメイン・サブの両方でセットしていたり、村上が攻撃手ランキング4位、雪丸も6位前後と思われる順位に位置していることを考えると、高いポテンシャルを有するものの、使いこなすには相当なウデが求められる玄人向けトリガーなのでしょうか。

弾丸トリガーに対してはシールド自体が強化される方向に進化したこともレイガストには逆風となってしまった様子も見られます。

「それに今はシールドの性能が上がってるから 昔よりは攻撃手が近づきやすくなってる」

第107話:嵐山のセリフより

弾丸トリガーの強化と流行に対して、それぞれ異なるアプローチで対策が図られたようですが、ブレードにシールド機能を搭載させたレイガストと、シールドの性能自体を強化する方向とでは、攻撃性能を犠牲にしたレイガストよりも、シールドの方が採用されやすかったのかもしれません。

また、そもそも攻撃手が個人ポイントを稼ぐには、チームランク戦や防衛任務もあるとはいえ、個人ランク戦がメインとなるでしょうから、防御より攻撃性能が重視されるのはボーダーのランキングの仕組み的にも仕方ないところがありそうです。

人気がないというのは、トリガーの性質以上に、ランク戦というシステムとの相性の方に問題があるのではないでしょうか。

修とレイガスト

横道に逸れてしまいますが、せっかくレイガストについて取り上げたので、修とレイガストの関係についてもここで見ておきたいと思います。
修はボーダーでは数少ないレイガスト使用者でありながら、現状では正隊員(B級以上)唯一の、レイガストを使うシューターである可能性があります。

「レイガストを盾として使う 防御寄りのシューターか」

第35話:風間のセリフより

展開したトリガーだけで、ほぼ初見であろうスタイルでもあっさり見抜く風間さん。さすが攻撃手ランキング2位。

村上は孤月メインのアタッカー、雪丸は本編未登場ですがレイガスト二刀流のアタッカーです。
レイジはパーフェクトオールラウンダーですが、中距離トリガーにはガンナー用のアステロイド2種とハウンドをセットしていますので、ミドルレンジでレイガストを使う場合は修と同じ「防御寄りのガンナー」という評価になるのでしょうか。

Q「ボーダーの新入隊員は、どのタイミングでポジションや武器を選ぶのですか?」
A「入隊試験の結果から、ボーダー側が適性を判断して、使うトリガーとポジションを決定します。最初はそのトリガーでスタートになりますが、隊員の好きなタイミングでちがうトリガー・ポジションに変更することが可能です。」

BBF質問箱DX:Q211より

このような解説がある一方で、嵐山は遊真の正式入隊の際、このような説明もしています。

「君たちが今起動させているトリガーホルダーには 各自が選んだ戦闘用トリガーがひとつだけ入っている」

第33話:嵐山のセリフより

ここでいう「入隊試験」は第82話で具体的に描かれていますが、学力試験・体力試験・面接で構成されている様子。

Q「ボーダーに入隊する際、試験や体力テストなどで何か条件がありますか?」
A「一応、基礎体力テスト・基礎学力テストと面接がありますが、トリオン量と犯罪歴以外の点で落とされることはまずありません。(修は落とされかけた)」

JC5巻:質問コーナー①より

修はこの82話の際は合格者に含まれていないため、ここでは不合格となっているはず。
人事部の水沼誠二部長に食い下がる様子も描写されているものの、その後、諦めきれずボーダー本部で直談判するつもりで警戒区域に侵入しているため、水沼部長が不合格を覆すことはなかった様子です。
このとき、警戒区域に偶々出現したトリオン兵に襲われたところを迅に助けられていることから、迅の未来視と暗躍によって合格にねじ込まれたのではないでしょうか。(麟児の失踪がT.C.2015.5.1で、それを受けて修がボーダー入隊を志願したという経緯のため、5月入隊には間に合わず9月入隊の試験を受験したと思われます。ここで落とされかけたものの、本当に落とされてしまったら12月の本編開始時に入隊できていないことになってしまうため、9月入隊者として合格扱いとされたものと判断できます。)

以上の経緯からすると、修がわざわざ自分からマイナーなレイガストを選択したのでもない限り、ボーダー側がレイガストを持たせたと考えるのが自然でしょう。
体力テスト的に孤月やスコーピオンに適性ありと判断される結果が出せたとは思えませんし、通常なら不合格レベルのトリオンしかない修ですから、弾丸にトリオンを消費するガンナーやスナイパーも厳しそう。

消去法でレイガストという選択肢しかなかったのかもしれませんが、トリオン能力に頼らずとも高い防御力が期待できるレイガストは、修には必要なトリガーとして与えられたとも考えられます。

正式入隊時のバムスター戦闘訓練では修は時間切れで失格だったとのことですが、玄人向けかつ防御寄りのトリガーで挑まざるを得なかったとすると、致し方ないところはあったのかもしれません。(そもそも攻撃力のないバムスター+トリオン切れのない仮想モードという環境に、防御重視のレイガストという時点で相性最悪という気もしますが…。)
遊真やヒュースのC級個人戦ランク戦のシーンでは、少数ながらレイガスト使いのC級隊員が確認できます。アタッカーなら村上のようなスタイルを目指せるでしょうが、もしシューターだとすると、彼らもまた修のように苦労しているのでしょうか…。

『レイガスト』は他の2本とはちがって守備的なトリガーなんだよね 『スコーピオン』みたいにブレードを変形できて 攻撃力が下がるかわりに耐久力が上がる盾モードがあるの
(そんな機能があったのか……)

第27話:宇佐美の説明と修の反応より

トリオンも知らずレイガストの使い方も知らなかった修ですが、玉狛支部でランク戦に参加しないレイジ、スカウト旅で本編未登場の雪丸はいずれも本部では滅多に見かけなさそうです。
そうすると、実質、レイガストで師匠を探すとなると村上一択となるわけですが、こちらも鈴鳴支部で本部にいるのはレアっぽいしそもそもアタッカーで修とはポジションが違うという…。

ただでさえ最弱レベルの修ですが、入隊後も扱いの難しいトリガーを抱え、使用者もほぼ本部にいないため弟子入りはおろか参考になる使い手を見つけることすら難しいという、実に不運な環境で過ごしていたものと考えられます。

烏丸に本当にB級か?と言われてしまっていますが、実際、イレギュラー門の戦功がなければ単独でのB級昇進は相当遅くなっていたのではないでしょうか。

まとめ

旧ボーダー時代:孤月が開発される

T.C.2012(後半?):スコーピオンが開発される

T.C.2012.11月前後:風刃争奪戦で迅がS級になる(太刀川やる気失う)

T.C.2013~T.C.2014:弾丸トリガーの強化、雷蔵がエンジニアに転向

(ちょうどこの頃、風間隊が結成される)

T.C.2014:レイガストが開発される、シールドの性能が強化される

(T.C.2014初頭、カメレオンが開発され流行する)

少し短いですが、今回はここまで。
次回は弾丸トリガーと玉狛の独自トリガーを考察するため長くなりそうです。
ご拝読ありがとうございました。

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