ワールドトリガーの考察記事、第2回です。
前回は作中の時間に沿って時系列を見ていきましたが、今回は過去編になります。遊真が転校してくる前までの期間に迫っていきましょう。
ワールドトリガーの作中では「○年前」や「○年ほど前」、「○年と少し前」といった形で過去の出来事や回想がときどき入ります。
ただ、作中でも時間が経過していきますので、どの時点からどれくらい過去の話なのかに気をつけなければ、時系列が前後してしまうことになります。
第一次近界民侵攻の時期
作中でも重要な事件として扱われている第一次近界民侵攻ですが、4年前、4年半前といった形での描写がほとんどで、具体的な日付は出てきていません。
しかし物語の根幹となる重大事件ですので、時期の特定は大きな意味を持ちます。特定に繋がる要素を探して考察してみましょう。
三門市 人口28万人 ある日この街に異世界への門が開いた
第1話:冒頭
(中略)それから4年 門は依然開いているにもかかわらず
「4年半くらい前にね 街中にいきなり黒い穴が開いて」
第2話:二ツ木(修のクラスメート)のセリフより
「有吾さんは……4年半前にボーダーの存在が公になる以前から活動していた いわば旧ボーダーの創設に関わった人間」
第18話:忍田本部長のセリフより
「今回起きた戦闘の規模は 4年半前の第一次近界民侵攻のおよそ8倍です」
第84話:記者会見時の根付のセリフより
冒頭のナレーションはともかく、他の3件はそれぞれその発言時期がはっきりしています。2話はT.C.2015.12月上旬、18話は同12月14日、84話はT.C.2016.1.28です。
T.C.2015.12月上旬 から4年半くらい前 → T.C.2011.6月上旬 |
T.C.2015.12.14 から4年半前 → T.C.2011.6.14ごろ |
T.C.2016.1.28 から4年半前 → T.C.2011.7.28ごろ |
12月上旬からでも1月下旬からでも「4年半前」という表現が可能な時期となると、T.C.2011.5~7月頃という可能性が高そうです。
ボーダー本部基地の完成時期
次に、第一次近界民侵攻に並んで設定の根幹となっている本部基地の完成時期についても考えてみましょう。
界境防衛機関「ボーダー」
第1話:冒頭
彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ(以下略)
ここでいう「わずかな期間」が実際にどれくらいかが不明ですが、ヒントとなるのが柿崎の回想シーンです。
4年ほど前 ボーダー広報イベント
第142話:柿崎の回想より
「ボーダー本部基地完成から3か月 このたび新しく正隊員に加わった若者たちです!」
この回想はB級ランク戦ROUND5の際のものですので、この時点の日付はT.C.2016.2.19。従って、4年ほど前となるとT.C.2012.2月前後と思われます。
7月29日生まれの嵐山と11月25日生まれの柿崎が、2人ともこのイベントの時点で15才と表記されていることから計算するとT.C.2011.11.25~T.C.2012.7.28の期間になりますが、こちらにも合致します。
本部基地完成はこの3か月前ということですので、前後に1か月程度のずれがあったとしても、T.C.2011.10~12月頃と考えて良いのではないかと思います。
第一次侵攻が5~7月頃の想定ですので、最短で3か月足らず、長くとも半年程度で基地が完成したことになりそうです。
同じくROUND5で対戦した香取隊の香取と染井の回想にも情報があります。
第一次近界民侵攻の数か月前
第144話:冒頭
この回想シーンですが、この2人はT.C.1999生まれ(10月と7月)ですので、第一次侵攻のT.C.2011時点では小学6年生。
第一次侵攻の数か月前のシーンですが、コタツが出ていること、染井の両親が冬物の上着であることから、1~2月頃と予想します。
第一次侵攻の時期を早めに見積もっても5月あたりが限度でしょうから、仮に12月だとすると「数か月前」ではなく「半年ほど前」と表現しなければ不自然となってしまいます。
回想シーンが切り替わって第一次侵攻当日、香取のパジャマが長袖であることや染井がカーディガンのようなものを羽織っていること(制服かも?)、三門市立総合病院でパーカーや薄手のニットを来ている人物がいたりすることから、第一次侵攻は5~6月あたりかもしれません。少なくとも7月の初夏という服装には見えません。(B級ランク戦で犬飼が雪を珍しがっていたため、三門市はあまり高緯度の都市ではなさそうです。)
「せっかくの日曜なんだから アタシは昼過ぎまでは寝るよ……」
第144話:香取の回想より
地味に第一次近界民侵攻が日曜に始まったであろうことだけは判明しています。
さらに場面が変わって香取と染井が進路(中学校)の話をしているシーン。河川敷を歩く2人の川の向こうには、(少なくとも外観は)完成したと思われるボーダー本部基地の建物が見えます。
2人の服装から夏や冬ではありません。染井は相変わらず制服と思われる服装ですが、第一次侵攻やその前の長袖カーディガンではなくノースリーブのベストです。香取は花柄っぽい膝上のスカートで春っぽくもありますが、黒のパーカーは秋物っぽい…。
ショートにばっさり切った染井に対して、香取はショートボブからボブくらいに髪が伸びていますので、3~5センチくらい伸びているでしょうか。少なくとも3~5か月程度は時間が経過していそうです。9月以降であることは確実でしょう。
染井が進路を決めているので3月頃という見方もできるのですが、もし秋(それも晩秋ではなさそう)とすると、基地完成の時期が絞れそうでもあります。
「結局三門の中学行くことにしたんだ? 華の成績なら県外の進学校行くと思ってた」
第144話:香取と染井の回想より
「うん 学校が落ち着いたら ボーダーに入ろうと思って
正隊員になればお給料も出るし 基地に部屋ももらえるんだって」
第一次侵攻が5~6月頃で基地完成が10~12月との予想ですので、秋だとすれば9~10月頃と思われるこの時期に正隊員の給与や基地に部屋がもらえる等の待遇が小学生の華の耳にまで入っていることになりますが…。
あんまり似てないが雄太とは従兄妹で、家がなくなった後はしばらく雄太の家に居候していた。
JC17巻:カバー裏の染井の解説より
秋説の立場で考えると、基地の完成を間近に控えてボーダーが隊員募集を開始した頃に、居候していた染井がその話を聞きつけて中学進学後のことを決めたという流れ。
ただ、「結局三門の中学行くことにしたんだ?」という香取のセリフは最終決定という雰囲気ですし、進学に関する手続き等を終えてのセリフといったニュアンスですから、秋の会話にしては早すぎる気がします。
染井の性格からするとじっくり考えて計算して決めそうですし、実際に「結局~」というセリフからは進学校と三門の中学とで逡巡があったことが伺えます。
大規模侵攻から秋まで3~4か月程度はありますので、進路を迷っていた期間として十分な時間は取れるのですが、やはりこのシーンは卒業の少し前の時期と考えた方が自然ではないでしょうか。
【144話の回想を秋と考えた場合】 5~6月頃 第一次侵攻 ↓ 9~10月頃 もう進路確定? ↓ 10~12月頃 本部基地完成 |
【144話の回想を翌年春と考えた場合】 5~6月頃 第一次侵攻 ↓ 10~12月頃 本部基地完成 ↓ 3月頃 進路決定、進学後にボーダー入隊予定 |
まとめ
T.C. 2011 |
1~2月頃? | 染井父が華が香取家への出入りを禁止する 香取家で葉子が兄と部屋をトレード、壁をくり抜いて窓を作る |
5~6月頃? | 第一次近界民侵攻 ボーダーの存在が公となる |
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10~12月頃? | ボーダー本部基地が完成 | |
T.C. 2012 |
2月前後? | 嵐山と柿崎がB級に昇進 広報イベントが開催される |
3月頃? | 葉子が華につられて、進学後のボーダー入隊を決意 |
T.C.2012以降、遊真が登場するT.C.2015.12月までは、大規模侵攻級の重大な近界民の侵攻事件は起こっていないようです。
この頃のボーダーは組織としての拡充期ともいうべき時期で、主に現隊員たちにまつわるエピソードが中心となってきます。
どうしても人数が多く分量も大きくなってしまいますので、次回の記事から数回に分けて考察していこうと思います。
ご拝読ありがとうございました。
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