WORLD TRIGGER vol.1

Junction Point

ワールドトリガー考察

かれこれ5年以上も飽きずに連載を楽しみにしている作品なんですが、それはおそらくこの作品の世界観や設定が、かなり綿密に作り込まれているからではないかと思います。
しかもそれが必要なときに必要な分しか明らかにされず小出しで明らかにされていくため、読者の方で補完しながら物語が進んでいくという面白さに繋がっているように感じます。

いつか深堀りして考察記事をまとめてみたいと思いつつ、すっかり延び延びになってしまいましたが、長期休載を経て連載再開し、SQへ移籍となったものの人気は衰えずアニメの第2期も始まるらしいので、私も本腰を入れて考察に取り組んでみたいと思います。

考察するうえでの独自ルール

いろいろと利便性も考えて、最低限の独自ルールを設けてみました。基本的には時系列を整理するための時間軸と、うろ覚えによる考察を防止するため、根拠の明示の範囲において引用を行うこと、の2点がメインです。

  • 紀年法は遊真と修の誕生年を「T.C.2000」とすること
  • 時期は可能な限り年・月・日を記すこと
  • 時系列の推定、確定には作中または公式の設定等から明確な根拠を求めること

当初は誕生年をセオリーどおり元年(1年)としてみたのですが、紀元前の出来事が非常にわかり難くなってしまったため、我々の西暦に近い年代に設定してみました。
T.C.はもちろんTrigger Centuryの略です。
このルールに当てはめると、第1話~第32話がT.C.2015、第33話以降は現在連載中も含めてT.C.2016の出来事になります。

作中では「○年前」や「○年ほど前」、「○年近く前」といった表現が多く出てきます。
しかし、当然ながら作中でも時間が経過しているため、どの時点から「○年前」を指すのかで時期にズレが生じてしまいます。
そのため、時期はなるべく特定し、可能な範囲で年・月・日の形式で表記することを目標としています。

なお、勝手な解釈や無理な推測はなるべく避け、時期の特定や推定にあたってはその根拠を明らかとするよう努めることとしました。

作中のリアルタイムな時系列

さて、さっそく考察に入っていきたいところですが、まずは作中で日付がはっきりしている出来事をまとめてみましょう。
動かしようのない事実をまず押さえておくことは、考察の前提を整えるうえでも有用です。

ただ、あまり細かいことまで拾いすぎると煩雑になってしまうので、主要な出来事に絞ってまとめてみましょう。

T.C.
2015
12/14(土) 遊真と三輪隊の戦闘が発生
遊真と千佳がボーダー(玉狛支部)に入隊
  12/15(日) 修、遊真、千佳が玉狛第1の隊員に弟子入り
  12/18(水) A級トップチームによる混成部隊と迅・嵐山隊との間で遊真のブラックトリガーを巡って争奪戦が発生
T.C.
2016
1/8(水) 遊真、千佳が正式入隊
  1/20(月) アフトクラトルによる大規模侵攻が発生
  1/27(月) 三門市立総合病院で修が目覚める
  1/28(火) ボーダーによる記者会見、遠征奪還計画が公表される
  2/1(土) B級ランク戦新シーズンが開幕、玉狛第2がデビュー
ROUND1(吉里隊・間宮隊)
  2/5(水) ランク戦ROUND2(諏訪隊・荒船隊)
  2/8(土) ランク戦ROUND3(鈴鳴第一隊・那須隊)
  2/9(日) ヒュース・エネドラッドを尋問
二宮が玉狛支部を訪問
  2/10(月) 修が嵐山隊・太刀川隊を訪ね師事を受ける
  2/11(火) 千佳14才の誕生日
  2/15(土) ランク戦ROUND4(二宮隊・影浦隊・東隊)
  2/16(日) ガロプラ・ロドクルーンに対する緊急防衛対策会議が開かれる
  2/19(水) ガロプラ・ロドクルーンによるボーター本部侵攻が発生
ランク戦ROUND5(香取隊・柿崎隊)
  2/20(木) ヒュースの入隊交渉
  2/22(土) ヒュースが正式入隊
ランク戦ROUND6(生駒隊・王子隊)
  2/23(日) ゆりとクローニンがスカウトから戻り玉狛支部に帰着
  3/1(土) ランク戦ROUND7(影浦隊・東隊・鈴鳴第一隊)
ヒュースがランク戦デビュー
  3/8(土) ランク戦ROUND8(二宮隊・生駒隊・弓場隊)

B級ランク戦が始まってからは、スケジュールに沿って開催されることもあり日付がはっきり描写されています。

第1話~11話の時期について

さあ、前置きはこれくらいにして、いよいよ考察に入っていきましょう。
今回は初回記事ということもあり、手始めに物語開始当初の時期を推測していきます。
ワールドトリガーの冒頭、第1話~11話に該当する期間になりますが、作中では日付までは明らかにされていない部分です。

【1日目の出来事】
・遊真が三門市立第三中学校に転入してくる
・放課後、警戒区域で修と遊真らがバムスターと遭遇、撃破する
【2日目の出来事】
・三門市立第三中学校にモールモッド2体が出現、撃破する
・嵐山隊が登場
・放課後、木虎が修の本部出頭に同行する際、イルガーが出現、撃破する
・迅にイレギュラーゲートの調査が指示され、修の処分が保留となる
・遊真とレプリカが深夜の学校で調べ物
【3日目の出来事】
・迅と修が1日目のバムスター撃破地点で遊真に会う
・イレギュラーゲート発生の原因がラッドであることを特定、駆除開始

12話からは12月14日の話となるため、上記の一連の出来事はその前の出来事です。また、84話で2日目のモールモッドの件について、12月上旬とされているため、12月1日~12月13日の期間の出来事であることがわかります。

「先月の上旬、市立第三中学校に近界民が現れた事件がありましたよね」

第84話:大規模侵攻後の記者会見(T.C.2016.1.28)で記者の発言より

また、遊真が転校してきた1日目と次の2日目が授業のある平日であることから、12月2日(月)~12月6日(金)か12月9日(月)~12月13日(金)のいずれかになります。「上旬」を厳密に文字通りの意味に取るのであれば、11日と12日は除外されることになりますね。

今はトリオン障壁で門を強制封鎖しとるが……それもあと46時間しかもたん」

第10話:鬼怒太開発室長のセリフより

強制封鎖が解けるまであと42時間……ぼくはのんきに寝てていいのか……?

第11話:修の部屋にて(部屋の時計の時刻は0:56)

2日目のイルガー戦の後、修が本部に出頭した時点でイレギュラーゲートを強制封鎖させるトリオン障壁の効果期限があと46時間とされていること、その後、修が帰宅してベッドに入っている時点ではあと42時間となっていますが、このとき修の部屋の時計が0:56を表示していることから、期限は翌々日(つまり4日目)の18~19時頃と考えられます。

迅の指揮のもと C級隊員まで動員した小型トリオン兵の一斉駆除作戦が 昼夜を徹して行われた
「しかしホントにまにあうとは」

第11話:ナレーションおよび遊真のセリフより

3日目の朝、修が迅と合流し遊真の元に向かいますが、ラッドが原因であることが判明しすぐにボーダー全隊員を動員しての一斉駆除が始まります。

昼夜を徹して、とあるので駆除完了まで2~3日との解釈も可能ですが、それだと強制封鎖が解ける4日目夜の期限に間に合わないため、1昼夜で完了したと考えるべきでしょう。駆除完了のシーンの背景を朝焼けと見るか夕焼けと取るかは難しいところですが、いずれにしても4日目までで作戦は完了しているはずです。

未成年隊員の法律問題

三門市は現代の日本に存在する架空の地方都市という設定のようですので、おそらく我々と同じ法体系が存在し、労働基準法も施行されていると考えて良いでしょう。
労働基準法第61条では未成年者の深夜労働の禁止が定められています。
18歳未満の未成年者を22時~29時の間に労働させてはならないのが原則です。
また、第56条では義務教育の者を労働させることの禁止が定められており、仮に労働させる場合でも第61条によって20時~29時の深夜労働は禁止されます。

第56条では、児童の健康及び福祉に有害でなくその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けることを条件として、例外的に年少者の労働が認められています。
小中学生でも芸能人などが賃金を得て活動できるのはこういったケースですね。
まぁ芸能人に限らず、新聞配達や演劇の子役などもこれに該当します。
従って、ボーダーの場合もこれらの手続きを行い許可を得たうえで中学生以下の正隊員が活動しているのかもしれません。
ただ、これらについてはあくまで就学時間外での労働を認めるものであり、就学時間に労働させることまでを許可するものではありません。

「あ……先生すみません ぼく2時から防衛任務があって……」
「じゃあお昼終わったら特別早退ね」

第43話:修と水沼先生の会話より

本来であれば就学時間中の労働は禁止ですが、児童の修学に影響がないように調整を行うなどして学校長や監督官庁の許可を得ているのでしょう。

第61条についても、災害等による臨時の必要がある場合などに例外的に年少者の深夜労働が認められることがあります。
ただ、深夜労働は児童の健康及び福祉に有害であることから、余程のことがなければ認められないものですので、ラッドの駆除が行政にどのように評価されるかで認否の判断が分かれそうです。

18歳以上 労働契約→〇 深夜労働→〇
18歳未満
(義務教育修了)
労働契約→〇 深夜労働→×
義務教育
(15歳で3/31以前)
労働契約→× 深夜労働→×

さて、そう考えるとこのラッド駆除は少し見方が変わってきます。
C級隊員まで動員して昼夜を徹して行う場合、原則どおりでいくと夜間は18歳以上の隊員で対応、昼間でも就学時間内は高校生以上の隊員が対応、中学生以下の隊員が活動できるのは昼間で就学時間外ということになります。

アニメ版第6話では木虎(中学3年生)がラッドの最後の1匹を駆除する様子がテレビで生中継されていましたが、そのシーンでは朝焼けか夕焼けの描写でした。
いくら緊急の対応が必要とはいえ、中学生隊員が明け方に活動している様子を公共の電波で堂々と流すというのもどうかと思いますので、これはきっと夕方のシーンだったのではないでしょうか。
つまり、4日目の夜を前にしてぎりぎり間に合ったという展開だったのではないかと思います。

また、当然ながら時間外労働の禁止についても抵触してくることになりますので、各隊員が昼夜ぶっ通しで駆除任務に就き続けるのも問題です。
いくらトリオン体が生身の肉体と比べて遥かに長時間の活動に耐えられるとしても、法令違反を容認して良いことにはなりません。
おそらくシフトを組んで交代で任務に当たったと考えるべきでしょう。

ところで、ボーダーの賃金については次のような設定があります。

Q「ボーダーの隊員はお給料をもらえるんですか?」
A「いずれ作中でも描写されるかもですが、正隊員はもらえます。B級はトリオン兵討伐の出来高払い、A級は給与+出来高払いです。C級は訓練生なので無給です。」

JC第5巻:質問コーナー①より

ラッドもトリオン兵ですから出来高払い扱いでしょうか?
C級も動員されている以上、こちらの無給は問題がありそうな気もしますが…。
訓練の一環ということで限定的な参加だったことにすれば大丈夫かも?

各正隊員がそれぞれ独立した個人事業主であり、雇用契約ではなく請負や委託契約で、対価も賃金や給与ではなく報酬や委託費である等、様々な要件をクリアしてそもそも労働者ではないという扱いが認められるのであれば、労働者でない以上、労働基準法の制約を受けないという取扱いも可能になりますが、さすがにこの線は厳しいかなと思います。

第1週か第2週か…

さて少し話が逸れましたが、続く12話では河川敷で千佳と遊真が出会うシーンからスタートします。この日は12月14日(土)であることが明示されています。バンダーが現れますが、それを撃破する修が既にB級隊員に昇級していることから、11話と12話の間に駆除作戦の戦功によるクビ取消と昇進が認められていることになります。
また、遊真が自転車や私服を入手する時間もどこかで必要なはずですね。

ここまでの情報からまとめると、遊真が転校してきた1日目として考えられるのは、12月の2日、3日、4日、5日、9日、10日のいずれかとなります。
残念ながら断定できる情報は無いようなのですが、どの日の可能性が高いか考えてみましょう。

ひとつ目のヒントは3日目の朝の修の服。制服ではないので、土日の可能性が考えられます。
しかし、修を監視する三輪と米屋は学ラン姿。一般人なら部活や塾で土日でも制服姿を見かけるのは不自然ではありませんが、A級隊員ですので、周囲に違和感を与えずに監視するのであれば、土日なら私服をチョイスしそうな気がします。
となると、この日は平日で、第三中学校は前日にモールモッド騒ぎがあり校舎に被害が出ていたため臨時休校となったことで私服だったのかもしれません。

ふたつ目のヒントは、遊真と迅が玉狛支部の屋上で話をしたときのセリフ。

「この何日かは面白かったな 久々に楽しかった」

第21話:遊真のセリフより

12話から始まる12月14日(土)は、千佳と遊真と修の顔合わせから始まり、三輪隊との戦闘、ブラックトリガーの奪取命令、空閑有吾の話、迅の玉狛支部へのスカウトと非常に濃密な一日となっていますが、その夜に出たのが上記のセリフです。

仮に1~11話の4日間が12月2日~6日の間に起こったとすると、そこから1週間ほど空白期間があり12月14日にこのセリフ、という流れになってしまいます。そうすると「この何日か」で括るのが少し苦しい気がします。
「この何日か」を素直に受け取ると、4日間の出来事と14日の出来事はそれほど離れていない時期になりそうな気がするのですが、さて…?

また、この4日間は修はかなりの時間を遊真・レプリカと過ごしていました。2日目の夕方すぎに三輪隊に監視の許可が下り、3日目と4日目は駆除作戦により一時的に監視が中断されましたが、1日目と2日目の修や遊真の様子からすると、三輪隊が近界民との接触現場を押さえるのにそれほど日数が必要だったようには思えません。

仮に1週間の空白期間があったとして、遊真とレプリカだけであればともかく、監視されている自覚の全くない修が何の尻尾も出さずに過ごせるとは考えにくいです。
たまたまバレるような出来事が起きなかった可能性もありますが、三輪は最初、千佳を近界民と誤認していました。
もし監視期間が長かったとすると、修と接触の多かったであろう遊真に疑惑の目を向けず千佳を近界民と即断する流れは不自然ではないでしょうか。
従って、この時点での監視期間はそれほど長くなかったことが伺えます。

まとめ

以上を踏まえて考えると、第1週では空白期間が不自然に長くなってしまいますので、おそらく第1話の遊真の転校は12月9日(月)か12月10日(火)の出来事だったのではないでしょうか。

9日だとすると駆除作戦の完了が12日の明け方か夕方、翌日が金曜となってしまうため、イレギュラーゲートの問題が解決されたのであれば学校がこの日から再開していそうです。

そうすると、その放課後に千佳と遊真を引き合わせれば良さそうなところですが、敢えて14日に河川敷を選んでセッティングしていることを考えると、1日目は10日と考えるのが最も自然な流れになるのではないかな?と思います。

・遊真の転入は12/10(火)
 *12/9(月)の可能性もある、その場合は1日ずつずれる
・モールモッド・イルガー戦が12/11(水)
・ラッド駆除開始が12/12(木)
・駆除完了が12/13(金)の夕方(もしくは明け方)、おそらくこの日のうちに迅が上層部から修のクビ撤回とB級昇格を認めさせる
・12/14(土)、千佳と遊真が河川敷に呼び出される、修は本部で手続き等のため遅れた?

今回の考察はここまで。
次回からはワールドトリガーの世界設定に本格的に入っていく予定です。
ご拝読ありがとうございました。

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